「本好きの下剋上」 第15話 感想 ~ 本が好きなのに本のない世界に転生したマイン、神殿へ!第1部のまとめもあるよ

©香月美夜・TOブックス/本好きの下剋上製作委員会

春クールで取り上げるもう1つの作品は、こちらです。

本好きの女の子が本のない世界に転生、というギャップが面白い本作、2019年の夏クールに第1部が放映されました。

第1部を見ていない方もいらっしゃるかと思いますので、2019年に放映された第1部のあらすじを最初にまとめつつ、各パートでも少しずつ世界観や人間関係を解説していこうと思います。第2部から入った視聴者の方にも分かる記事になるようがんばります。

※アイキャッチ画像ならびに本文中の画像は、©香月美夜・TOブックス/本好きの下剋上製作委員会様公式HPより引用しています。

第1部、ストーリーまとめ!

本が大好きなのに、転生した世界には本がない?!

マインの前世は本須麗乃という本が大好き……というより活字中毒な女子で、本に囲まれて暮らし、世界中の図書館を巡りたいという夢を持っていました。しかしある日、本棚から落ちてきた本の下敷きになり、小さな少女、マインとしてこの世界に転生してきます。

彼女にとって大問題なのは、この世界では本が一般に流通していないこと。本は貴族しか手に入れられないような貴重品で、庶民の家の子、マインは読むことどころか触ることすらできません。紙も動物の皮を使ったものであり大変高価。そもそも平民だと読み書きも満足にできないのが普通、というのがこの世界の常識です。

本どころか紙すら満足に流通していない世界で、マインはまず紙から作ろうとします。本に対する情熱は、全編通して全くブレることがありません。
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本好きのマインにとってこれは耐えられない!しかしなければ作ればいい!ということで彼女は文字を覚え、粘土板や木簡、和紙などの知識を応用し紙を作り、同い年の友人、ルッツの協力を得ながら本造りにチャレンジしようとします。

その過程で、マインは商人のベンノと知り合います。マインが持つ不思議な知識の数々がお金になると感じたベンノは、マインに様々な支援をします。いつしか、ベンノはマインをわが子の如く応援するまでになっていきます。

マインの体を蝕む「身食い」。回避するためには?

一方、マインの体には大きな問題がありました。虚弱体質で、なにをするにもすぐに体力が尽きてしまうのです。この原因は、マインの体に宿された「魔力」にありました。魔力は本来貴族しか持つことができない。しかし稀に、庶民の子で魔力を持つものもいる。それがマインだったのです。

しかしそうした病気は「身食い」と呼ばれ、なにもしなければ幼少の内に命が尽きてしまう。事実、本物のマインはそれで死に、今は麗乃がその体に乗り代わったともいえる状態です。

それを回避するためには、魔力を用いた方法で熱を収めるしかない。そしてマインは、神殿へ行き着きます。神殿には魔力をコントロールすることができる神具や貴族がいます。なんといっても!神殿には本がたくさんあります。本を目当てに、神殿の巫女見習いになりたいと家族に言うマイン。しかし平民にとって、神殿は孤児が行く場所という認識であり、住み込みで貴族にこき使われる見習いになるなんて、と父のギュンターは大反対。

商人のベンノは、マインが麗乃の頃得た知識から様々な新商品を開発、販売。そうしてマインと関わる内に、親身になっていろいろなことを教えてくれるようになりました。
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そこで商人のベンノが知恵を出します。マインは魔力を持っていて、これは神殿が求める人材と一致する。また、麗乃として得た知識を活用しマインは庶民としては相当なお金を持っており、神殿はこれも求めている。これを切り札として、貴族と同じ待遇で、かつ住み込みではなく通いで神殿に仕事するよう交渉すればよいのでは、と提案するのです。

マインは神殿長に対しそのように交渉しますが、最初からマインの魔力と金を搾り取るだけのつもりだった神殿長は怒り、マインたちを力で押さえつけようとします。しかし、そんな横暴を見たマインは感情が高ぶり、膨大な魔力をコントーロルできずに神殿長に逆襲します。

神殿のトップである神殿長は、庶民を見下す下品な男でした。交渉の際も力づくでマインを手に入れようとしますが、マインに逆襲されて泡吹いて (物理) 倒れてしまいます。神殿長とマインの関係は、第2部の重要なキーになりそうです。
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それを見た神官長のフェルディナンドは、場を収めるために、またマインの力を活用するために間に入り、マインの出した条件をほぼ全て飲む形で決着させました。マインは貴族と同じ扱いの、青色巫女見習いになったのです。

マインの「身食い」は解決するのか?そして、麗乃の頃からの夢だった、本に囲まれて暮らす生活は訪れるのか?

下町とは全く異なる、神殿という社会!

第15話のストーリーまとめ!

では、第2部のスタート、第15話を見ていきましょう。

青色巫女見習いになったマイン。
青色巫女には、側仕えがつきます。フェルディナンドは自分の側仕えを1人つけると言いますが、神殿長はさらに追加すると言います。第1部のラストでマインに一泡吹かされた神殿長は、当然マインのことをよく思っていません。マインの魔力と金をギリギリまで絞った上で嫌がらせをしてやれ、と考えているのです。

そして神殿への初出仕の日が来ました。
ですがマインは明らかに歓迎されていませんでした。平民の出自なのに青色巫女という貴族と同じ待遇を得ることに、青色神官も、孤児たちで構成される低い身分の灰色神官も納得がいっていないのです。聞こえよがしに嫌味を言われ、睨まれるマイン。フェルディナンドは「歓迎する」とは言っていますが……。

右がギル、左がデリア。ギルは灰色神官の中でも厄介者扱いされる問題児、デリアは神殿長の愛妾になりたいというスパイ。こんな2人が側仕えなんて……波乱の予感しかしません。
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儀式を終え、側仕えとなるものを紹介されるマイン。フェルディナンドの側仕えだったフラン、同い年の女子デリア、そして2つ年上のギル。

マインはフランに対し敬語で接しますが、フェルディナンドからそういうことをするな、と注意されます。神殿の中で青色神官と灰色神官は厳然たる差があるからです。

しかし側仕えとなった3人は、マインに敬意を表する気配はありません。ギルは粗暴な態度を隠そうともしませんし、デリアはなんと神殿長の愛妾となるべく神殿長の言われるがままマインを困らせることを明言すらしています。フェルディナンド側から派遣されたフランも、態度には出さないもののマインのことを全面的に支援しよう、という雰囲気ではありません。

平民社会とは全く異なる常識が横たわる上に、明らかに神官たちからも歓迎されていないマイン。これは果たしてやっていけるのか?

不安なまま、第15話は幕を閉じます。

世界観やキャラクターの立ち位置を整理

第15話の名ゼリフ・迷ゼリフ!

厄介なことになったな(フェルディナンド)

神殿長がマインに嫌がらせをすると言った後、フェルディナンドが廊下で1人つぶやいたセリフです。

このフェルディナンドは、神殿で事務方のトップである神官長を務めています。横柄で差別意識を隠そうともしない神殿長と違い、現状彼はマインに対し差別意識を持っているようには見えません。むしろ、マインと神殿長の話し合いが決裂した際に話を取りまとめたりするなど、かなり優秀かつ現実的なように見えます

無能なトップと優秀なナンバー2、神殿はそんなよくある組織構造になっているようです。

イケメンの上に仕事もできる神官長、フェルディナンド。マインのことを気遣ってか、神殿運営のためか、神殿長とマインの間に立ってものごとを上手く進めようとしています。彼は敵か、それとも味方か?!
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第1部で明らかにされていましたが、神殿は今構造的な問題を抱えています
この国の中央では、貴族たちの政変により、粛清が行われるという事件が起きました。粛清により激減した貴族を補うため、神殿にいた青色神官たちの一部は家に戻ることに。

そのため、神殿は魔力を使える青色神官が減少し、神殿や社会をコントロールするのが難しくなっているのです。魔力を持つマインが神殿にスカウトされた(搾取するためですが)のは、そうした経緯があるためです。

そうした問題と向き合っているフェルディナンドが、マインにどう接していくのか?彼はマインの敵なのか、味方なのか?この辺が今後のストーリーの大きなキーとなっていくでしょう。

このセリフを見る限り、彼はマインの味方のようにも見えますが……果たして?

神殿の常識が、違いすぎるんだよ!(マイン)

デリアの目標が神殿長の愛妾になることを聞いた際の、マインの心の叫びです。
このセリフは、正しくは「神殿の常識が、麗乃時代とも下町とも違いすぎるんだよ!」です。

第1部では、マインに転生した際に、麗乃としての常識(これはほぼ現代日本の一般庶民としての常識と考えていいでしょう)とこの世界の常識のギャップにもいろいろと大変な思いをしてきたマイン。ただ、下町暮らしで見た常識は、どちらかというと過酷な生活環境から由来することが多く、人々の考え方自体は素朴で優しいものが多かった。

マインの側仕えの1人、フラン。彼はマインよりずっと年上ですが、貴族待遇の青色巫女であるマインと灰色神官の彼には厳然たる格差が存在しています。神殿は、階級社会に加えて人間関係も複雑そうで一筋縄ではいかない雰囲気……。
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神殿は違います。貴族と平民が混在する中で、厳然たる階級社会が成り立っているため、平民であり身寄りのない孤児である灰色神官は、貴族である青色神官に取り入ってよい待遇を得る、そのためには他人を蹴落とすのも当然と考えているようです。そのために女性ならば体を使うのが当たり前、というのは、一般的には受け入れ難いものなのは想像に難くありません。

第15話の中盤で、マインは町の人によく思われないだろうから神殿に仕えることを隠していますが、こんな常識が横行する組織は、確かに庶民からすると訳のわからない世界といえます。

出仕1日目で強烈なパンチを食らったマインの、現在地を象徴するセリフではないかと思います。

困難ばかりの異世界生活。でもマインならやれるはず!

転生前と転生後、全くブレない彼女の「生き様」

本作は2019年夏クールに放映された第1部の続きになっています。
「2期もの」は個人的には敬遠する傾向にあります……ものによっては1期を見ていないと意味不明にスタートするものも多いですからね。しかし本作については面白いと勧められ、第1部を一気に見てから臨むことにしました。

先日の「はめふら」でも触れましたが、転生した際に元の世界の設定をどう生かしていくかという点は、異世界転生ものの設定を見る際のキーの1つです。その点本作は非常に分かりやすい。マインの行動は全て、元の世界の趣味である読書をするということに基づいています。彼女はそのために文字を覚え、紙を作り出そうと努力しますし、神殿に来たのも図書室があるから、というのが大きな原動力です。

ここまで行動理念が一貫している作品もなかなか珍しい?ここまで来ると、彼女の本好きは趣味を超えて「生き様」とも言えるレベルですね。

なにかに絶望すると、体の奥底から高熱を発してマインの体を蝕もうとする「身食い」。転生した人物の魔力が特別高い、というのは異世界ものではよくある設定ですが、本作ではそれが仇になってしまいます。
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もっとも、第1部後半からはその本というテーマからちょっとだけ離れ、マインの身体的問題である「身食い」をどうするか、という話に移っていきます。

結論から言えば、身食いは治すことができない。ただ、魔術具を使えば症状を抑えることはできる。とはいえ、魔術具は貴族のもので、平民では大金を出して変えるか、どうか、というアイテム。おいそれとは手に入りません。

神殿でもしたたかさを発揮するはず!頑張れマイン

本に囲まれて暮らしたい、そして身食いの症状を抑えたい。
この2つのテーマを解決するために、マインは神殿に出仕することを決めるというのが第1部の大きな流れだったことは冒頭で見た通りです。いわば第1部は下町編、第2部は神殿編といったところでしょうか。

その神殿編では、これまでほとんど出てこなかったファクターである貴族というものが全面に出てきます。それによって、下町では見えてこなかった階級社会の実態も。これは難儀しそうな雰囲気……。

様々な問題を抱えつつも、神殿に出仕したマイン。彼女は身食いの問題を解決できるのか?そして本に囲まれて暮らす夢を叶えられるのか?
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ですがマインは、麗乃としての知識をフル活用してこれまでも危機を乗り越えてきました。やりたいことを実現しようとするしたたかさや、交渉に負けない頭の回転力もあります。その能力があれば、神殿でも困難を乗り越え、本に囲まれた暮らしができるはず!

そんなマインの姿を見ていきたいですね!

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