第16話でフランを協力者として引き入れたマイン。
しかしマインの側仕えは3人いて、大人のフランと違いギルとデリアはマインの言うことを素直に聞きそうにもありません。
彼らにどのように接していくのか?第17話ではそこが描かれました。
※アイキャッチ画像ならびに本文中の画像は、©香月美夜・TOブックス/本好きの下剋上製作委員会様公式HPより引用しています。
青色巫女の役割と、灰色神官の立場
第17話のストーリーまとめ!
ルッツの付き添いのもと、神殿に到着するマイン。側仕え3人はそれを出迎えます。しかしギルとデリアは相変わらずの態度で、デリアは静かにしろ、と言われたのをいいことに早々と退散してしまう有様。
マインの体調管理について話を言付かってきたルッツ、フラン以外話すべき相手はいない、と思ったようで、ギルを無視して神殿に入ろうとします。
無視されたギルは怒りました。マインの腕を引き、引き留めようとします。しかしギルの腕力が強いのか、マインが軽すぎるのか、勢い余って、マインの体は宙に……。
マインが後ろから倒れ込むのを、なんとかルッツが抱えて阻止します。マインが乱暴されて怒ったルッツ、そのままギルに飛びかかり馬乗りになります。ギルも力は強いはずですが、マインが乱暴されて怒ったルッツの方が上!ギルは抵抗できません。
神殿で暴力はNG、ということで、マインはルッツにやめるよう言いました。ルッツは納得いかない、という表情でギルをクビにしろ、と大声を出します。
しかし……そこでマインはギルが全然食事を取っていないことを知ります。側仕えになった灰色神官は、青色神官の食事の残り(実際にはそれを見越して多めに配給されるのでしょう)を恵みとして受け取るのがルール。さらに、住む部屋も青色神官の部屋に住み込むもの。
しかしマインは通いなので部屋もなく、本に夢中で食事も取っていませんでした。ギルは食事もなければ寝る場所もない、そういう状態だと初めて知るマイン。ギルは仕事もせずにそうした恵みだけを都合よく享受しようとしていたわけですが、一方のマインも、青色神官として灰色神官を養う義務を怠っていたことに気づきます。
そこでマインは一計を案じました。敢えてフェルディナンドの前で着替えることで、着替える場所がないことをアピール。部屋を要求します。タイミングよく、神殿併設の孤児院の院長室が空いているということで、マインはその部屋を割り与えられました。
そしてマインは、その部屋の掃除をギルに命じます。これにはフェルディナンド以下、その場にいたもの全員が驚きます。ギルは真面目に仕事をしないことで有名でした。ましてやマインを気に入らず逆らっているのに、マインの命令など聞くわけがない……誰もがそう思いました。
しかし、ギルは命じられた通り掃除をやるのでした。彼の頭の中にあったのは、マインに言われた「働かざるもの食うべからず」の言葉。働けば食事にありつける……そう考えて、長く使われていなかった部屋を一生懸命掃除したギル。想像以上にきれいになった部屋を見たマインは、ギルの頭をなでて褒めます。それを聞いたギルは、目に涙を……。
そしてその部屋には、オーブンがありました。この世界では貴族しか利用できない貴重なものです。これを使えばイタリアン料理が作れる!マインはベンノに頼み、料理人を派遣してもらいました。そしてマインの指示の下作ったピザは、マインも納得の出来!転生した世界でピザが食べられ、マイン感激です!ベンノも、その美味にはびっくりしました。ましてもマインのマジックが炸裂です。
しかし、これに怒ったのが神殿長でした。自分の知らない間にマインに部屋が与えられたとは……本来そうした情報をキャッチするためデリアを差し向けたのに、デリアはマインの言うことを曲解してサボっていて機能しなかった。神殿長は怒りに任せてデリアを部屋から追い出します。
行き場所を失ったデリアは、マインのところへ文句をつけに駆け込んできます。しかしフランやギルは冷たい視線を送りました。デリアは今まで神殿長の寵愛を受けていることをいいことに、まったく仕事をしてきませんでした。それでも回っているマインたち。マインのもとでは、働かざるもの食うべからずがルールです。
それを聞いたデリア、仕事なんて楽勝!と言わんばかりに、来客として座っていたベンノの膝の上に座ります。客を「華」としてもてなすのが自分の仕事だと。しかしベンノにそういう趣味はありません。そっとデリアを拒みます。
仕事もできない現実を突きつけられたデリア。このままだと孤児院に戻されてしまう、と目に涙を浮かべます。
しかしそんなデリアに、マインは微笑み、ここにいていい、と言いました。優しい言葉をかけられたデリア、マインに世話係として従うことになりました。
第17話はここで終わります。
孤児である灰色神官が恐れるものとは?
第17話の名ゼリフ・迷ゼリフ!
私がギルに与えるべきもの、それは感謝と褒め言葉だった(マイン)
ギルが命じられた掃除をきちんとこなしたことに対し、感謝を伝えた結果、ギルは目に涙を浮かべました。あの粗暴なギルがひざまずいて涙とは……とても印象的なシーンでした。
第16話や冒頭を見る限り、ギルに必要だったのは食事でした。孤児院で満足に食事を取ることができなかったギルは、食事目当てで側仕えになる件を受けます。しかしマインが本に夢中で食事を取ることをしなかったため、その目的すら達成できなかった。あの年頃の男子が食事を取れないことが耐え難いのは、想像に難くありません。
そもそもギルは、孤児の中でも問題児とされてきました。ギルの会話から鑑みるに、孤児院の食事は量も質も貧しいものなのでしょう。その中で食事を満足に得るには……力で奪い取る、孤児院はそうした弱肉強食のような世界だったのかもしれません。
そんな彼は、マインから仕事を与えられた。仕事をすれば食事ができると知った彼は、周囲の期待をいい意味で裏切り、しっかりと仕事をしました。その結果、マインから与えられたのは食事、そして感謝と褒め言葉でした。
このシーンを見て思うに、ギルに与えるべきものはまず「食事」、そして「役割」だったのかもしれません。人間、基本的な欲求である衣食住が満たされなければ心も荒みます。仮にそれが満たされたとしたら、誰かの役に立ちたいという思いが出てくるもの。
部屋の掃除の1件で、思いがけずその両方を得たギル。それ以降、彼はマインに協力的になっていきます。人間を動かす原理をマインが突いた結果だとも言えましょう。
孤児院に戻るのだけは、嫌……!(デリア)
スパイとしてマインの側仕えになったデリア。しかしサボり過ぎて、神殿長から見放されます。さらにマインからも見放されかけた彼女が、目に涙を浮かべながら訴えたのがこのセリフです。
このセリフの前、彼女はマインの前で嘘泣きをしてマインの心を揺さぶろうとします。また、なにか仕事をしろと言われた際、迷いなく来客であるベンノの膝の上に座って歓心を買おうとしました。神殿長の愛妾になると平気で言ったことも含めて、デリアが女としての持ち物を躊躇なく使う考え方の持ち主であることが分かります。
しかし、デリアはマインと同じ年の子供です。そんな子供が自ら女を売ろうと思うものでしょうか?答えはNoで、彼女のこうした「常識」もまた、ギルと同様環境によるものが大きいと言えましょう。
逆に言えば、女の孤児を青色神官(=貴族)や来客が弄ぶことが神殿、そして貴族たちの常識であると思うと、そのおぞましさにゾッとします。
女性として大切にしたいものを麻痺させてまで生き延びようとするデリア。そんな彼女をもってして、戻りたくないという孤児院とは一体どんなものなのか……?
味方を増やしたマイン、さらなる活躍に期待!
おぞましい「神殿の常識」
第16話ではフランを味方に引き入れたマイン。続くこの第17話では、ギルとデリアという問題児2人も仲間にすることができました。
第16話でベンノの叱責、いや諭しを受けたマインは考え方を変え、彼らに近づこうとします。フランやギルはその態度を素直に受け入れましたし、デリアもマインを主と認めました。側仕えとして常に行動を共にする3人がマインの理解者となったことは、マインの神殿での活動の自由度をグッと上げていくことでしょう。
さてストーリーの中で、ベンノは膝の上に座ったデリアをそっと退けます。当然の行動ですが、深く考えると結構ヤバい話かもしれません。
ベンノは商人であるため、神殿のことを他の平民より詳しく知っており、貴族や神殿と相対する際の作法も熟知しています。一方、彼は身分としては平民であり、貴族を超えることはできない。
仮に彼が神殿に赴き、同じようなシチュエーションで、上座に座っていたのがマインではなく他の男性青色神官だったら?ベンノは「華」として添えられたデリアを拒否することはできなかったかもしれません。貴族から贈られた「もの」を拒むなどという不作法をすれば、商人としての地位はおろか命すら危ない……彼らはそういう世界にいるのです。
神殿の常識は世間の非常識であることが嫌というほど分かる、第17話はそんな話だったと言えましょう。
マインは概念をも生み出していく?
そこで、改めて注目したいのがマインです。マインは前世の記憶があり、かつ平民としての常識を身に着けています。そんな彼女にとって、女性を「華」として添えるような神殿や貴族の常識が受け入れがたいものなのは間違いありません。こうした風土を変えてやろう、そういう気持ちがマインの中に芽生えたとしても何らおかしくはないでしょう。
実際、第18話のタイトルは「孤児院の大改革」であるところを見ると、神殿の中でかなり劣悪な環境にあると想像される孤児院の改善から着手する模様です。
ここからは想像ですが(原作つきの作品の展開予想はあまり意味がないとは思いますが……)、孤児である灰色神官の待遇を改善するとなると、貴族である青色神官にとっては面白くないはず。
しかし神殿の中にいる人間は圧倒的多数が灰色神官。待遇改善によって大多数を占める灰色神官たちがマインの味方をしたとしたら、神殿の勢力図は大きく変わってくるでしょう。さらにその動きが、神殿やこの町にとどまることなく、中央まで広がったとしたら……?
彼女は前世の記憶を元に、この世界になかった品物を次々と生み出します。しかしここからは、物ではなく概念、つまり人権や平等といったものをこの世界にもたらしていく役割を担っていくのかもしれません。
そう考えるとワクワクします!
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