今回で第5話を迎える本作ですが、季節的には物語がスタートしてから約1年が経とうとしています。長いような短いような……リアルの時間の感じ方ともリンクする展開が面白いですね。
そしてこの第5話では新キャラクターが登場!陸王と晴の心にさざなみを揺らしていきます。どんな役割で出てきたのか?見てみましょう!
※アイキャッチ画像ならびに本文中の画像は、©冬目景/集英社・イエスタデイをうたって製作委員会様公式HPより引用しています。
個性派、芸術家肌の航一と、晴や陸生の関係は?
第5話のストーリーまとめ!
季節は移り、秋。陸生は写真ギャラリーで新たにバイトを始めました。そこに、湊航一という大学生が現れバイト仲間になります。
なんと彼は晴の元同級生。しかし報道写真家を志望する「意識高い系」で、ちょっと上から目線で物を言う航一を、陸生は好きになれません。
それから数日後、大学の同級生たちと飲み会をした陸生は、同席した榀子と一緒に帰宅しますが、そこに晴と航一が現れます。晴のバイト先に客として来ていた航一が晴を送っていたという偶然が重なっての出来事ですが、陸生、榀子、晴、ともども気まずい展開……。
晴は航一と一緒にいるのに、陸生がなにも言わないことに少しご立腹。もっとも、陸生もなんでこんな夜に晴と航一が一緒にいるのか、関係ないと言いながら少し気にしていたり……?
ちょっとムカついちゃった晴は、航一を付き合わせてお菓子とジュースをやけ食いします。ため息をつく晴と、意味ありげな言葉で彼女を励ます航一。
その話の流れから、航一が晴のことを好きであることが分かります。高校時代、自分の撮影した寂しい風景写真を欲しいと言った晴。なぜその写真を選んだのか……そんなきっかけがあり、航一は晴のことを気にするようになったのです。
もう会えないと思っていた晴と思わぬ再会を果たした航一は、バイト中に陸生を質問攻めにします。榀子のこと、晴のこと……晴のことをぞんざいに扱う陸生にライバル心を持っているのがアリアリです。
季節は秋から冬へ。航一は毎日のように晴のバイト先に通っていました。鈍感な晴も、さすがに彼の気持ちには少し気がついた様子……?そしてある夜、航一は晴のバイト帰りを待ち伏せし、晴をデートに誘うのでした。
翌日、海の見える公園でデートする2人。よくこの公園に来るという航一。彼はここで、晴に付き合ってくれと告白します。
晴の返答は……Noでした。陸生の気持ちが榀子にあり続けて、自分の方を向いてくれないと悩む晴。でもだからといって他の誰かと付き合うのは自分に嘘をついていることになる。晴はしっかりと自分の言葉で航一にそのことを伝えました。
その答えはわかっていたという航一。彼は実は、すでに大学を退学していました。このままだと自分のやりたい写真活動ができないと感じ、カメラを片手に世界を放浪する旅に出るとのこと。
その前に、心残りがないよう告白したかった……思いを全部伝えきった航一は、晴にさようならを伝えます。晴はそんな彼に握手を求め、去っていく彼の背中を淋しげに見つめ別れました。
後日、陸生のバイト先で、写真コンクールの作品が展示されました。金賞は航一の写真。それもなんと、晴の高校時代の写真。とても美しく撮影されたその写真を見た晴は、航一の自分に対する想いを感じ、笑顔を浮かべるのでした。
恋愛とはなんぞや?言葉と行動で航一が問いかける
第5話の名ゼリフ・迷ゼリフ!
同じところをグルグルしなくなったってこと(榀子)
第5話ではあまり登場シーンがなかった榀子。しかし、短いシーンの中で出てきたこのセリフはとても重要です。
前回の第4話、帰省した榀子は浪の兄、湧の形見を見て涙しました。そして湧の父からも、前に進もうという言葉をもらっています。そもそも、浪は榀子が帰省したこと自体、湧に対する想いに区切りをつけにいったと捉えています。
以前は春になるたび、桜を見ると湧が亡くなったあの日を思い出し辛い想いをしていた榀子。第2話でピックアップした「同じところをグルグルしているんだよ」という印象的なセリフはそれを象徴していました。
しかしこの第5話で、逆にグルグルしなくなったと自分の口から言った榀子。これは湧への気持ちの区切りがついたことを表しています。そしてそれは、次なる恋……つまり陸生か浪にチャンスが出てきた、ということ?!次回以降の榀子の動向に注目です!
こういうのは好きになったほうが負けなんだから(航一)
陸生のことが好きなのに、陸生が全然振り向いてくれなくてふくれる晴。そんな彼女に航一がかけた言葉がこのセリフです。恋愛は好きになった方が相手の一挙手一投足に振り回されるのは仕方がないこと……短いながら、真理を突いた一言です。
ところでこのセリフのあとに、航一が晴のことを好きだったことが明らかになります。陸生と晴の恋愛では、晴の方が陸生を好きになったから晴の負け。逆に航一と晴の恋愛では、航一の方が晴を好きになったから航一の負け、ということになります。
晴に想いを抱えつつ、「負け」という言葉を使った航一。この一言が一般論から出てきたのか、それとも自分の気持ちから出てきたものなのか。そこを考えると、とても面白いですね。
あんまり嫌われてもなさそうだから(航一)
晴に告白をした航一。その際に出てきたのがこのセリフです。これはかなり面白く、恋愛というものを考える際に気になるセリフだと思いました。
男女が付き合う際、お互いがお互いのことを1番に好きでいる状態であったとしたらそれは1番理想的で双方が幸せな状態です。アニメや漫画などの物語だと、この状態になることが一般的にはハッピーエンドとされますね。
とはいえ、そういう理想的な展開はそうそうない。自分が相手のことを好きだけど、相手はそうでもない、ということがほとんどです。じゃあその場合、交際に発展しないのか?これが必ずしもそうではないのが恋愛の難しく、面白いところ。
晴は陸生のことが好き。でも陸生は晴と付き合う気は(現時点で)なさそう。であれば、妥協して自分と付き合ってもいいんじゃないか……航一はそうした駆け引きめいたことを晴にちらつかせていると言えます。そしてその理由が「嫌われていないから」。嫌いでなければ付き合ってもいい、と考える女性が一定数いるのも確かですし、そうして付き合っていくうちに好きになっていく、というのもよくあることです。
と書くと、航一が恋愛テクニック上級者のような言い方になってしまいますが、実際の航一の考えは逆です。航一は、晴はそんな妥協めいたことはしないだろう、小手先のテクニックでは付き合ってくれないだろう、と信じたからこそ告白したのです。
自分の好きな人が自分の思う通りの信念を持っていた、自分は相手のことを深く理解していた……これはある意味、交際を受けてくれるよりも痛快な気持ちを味わえることかもしれません。
晴、陸王の心の中を映し出した航一の言葉
使い捨てカメラに見る、本作とカメラ
航一がカモメを撮影する際使っていたのは使い捨てカメラ。これは今となっては少し解説が必要でしょう。
デジカメが世に出る前、写真は高価な機材とフィルムをちゃんと扱わないと撮れないハードルの高いものでした。しかし1986年に富士写真フイルムが発売した「写ルンです」は、購入後すぐに撮影できて、現像ショップに渡せば写真ができるというお手軽なカメラでした。現像ショップに渡したあとそのカメラは戻ってこないことから、使い捨てカメラと呼ばれていました。
写ルンですの画期的なところは、手間的にも値段的にもお手頃な上に、誰が撮影しても割といい写真が取れること。ハードルの高かったカメラ、写真を若い層にもぐっと近づける役割を果たした写ルンですは、今のスマホカメラ的な位置づけだったのです。第2話でも、卒業式で生徒が持っていましたね。
誰でも簡単にいい写真が撮れる、というのは小さな機体に技術が練り込まれていたという証拠。なので航一の言う通り、プロもその味を気に入っている人は結構います。そしてそんな使い捨てカメラは、過去の遺物と思われるかもしれませんが、実はまだ発売されており、一定数の愛好家を惹きつけ続けています。写ルンですをさり気なく語り使う辺り、原作者の冬目景先生のカメラへの造詣の深さを感じます。
あと、お好み焼き屋で航一が陸生に対しどんなカメラを使っているのかと質問したシーン……陸生は答えをぼやかしますが、カメラ好きは相手がどんなカメラを持っているかお互いに気になるもの。高価なカメラの所有者が、安価なカメラを持っている人をマウンティングしたりすることはあるあるだったりします。
あまり高価なカメラを持っていない陸生が「馬鹿にされるかも?」と思って言わない辺り、カメラファンの心理がわかってるなぁ、とちょっとニヤリとしてしまいました(笑)
短い登場だったけどインパクトあった!
さて第5話では、新しいキャラクター湊航一が現れました。晴が好きという報道写真家志望の彼は、短い間でしたが晴や陸生の心を映し出す役割を担っていたように思えます。
晴は、彼の想いを通じて自分の陸生に対する想いを新たにしました。優しく、自分のことをしっかり見つめてくれる航一。晴が彼にいい感情を持っていたのは明らかで、このまま彼と交際するという選択肢も頭をかすめたことでしょう。
でも晴は妥協しなかった。晴の恋愛に、自分の気持ちに対する素直で真面目な性格を、航一を通じて改めて見ることができました。
一方の陸生。晴のことは関係ないと言いながらも、航一が晴へ急接近することにビミョーな感情を抱いています。自分のことを好きだと言ってくれた女の子が、他の男と仲良くしている……男子的には何とも言えないモヤモヤした状況なのは間違いありません(笑)陸生が榀子のことを想いつつも、晴に対しても一定以上の関心を持っていることがよく分かりました。
しかし陸生……浪のときもそうでしたが、年下のライバル(?)に対し、最初は大人の余裕を見せようとするものの、途中で余裕がなくなってくる、大人になろうとしてなりきれない感じがありますね(笑)個人的にはそんな彼の姿がものすごく共感できるので好きなのですが!
最終的に、晴に想いを伝えて晴の前から去る航一。付き合うことを目的とするわけではなく、自分のために告白したという意味で、第1話の陸生の榀子への告白に通じるものがあります。
なんとも不器用だし、見方によってはある意味自分勝手なわけですが、自分自身の恋心に対する向き合い方は、本作に出てくる他の男性キャラクターと共通しています。相手のことを想いつつも自分のことに必死……本作は全体的に、恋愛と自分の間で揺れる若き男子の姿を描いているように見えますね。
晴や陸生の心を映し出す役割を果たした航一。
短い間ながら、爽やかでインパクトある存在でした!
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