「映像研には手を出すな!」 10話 感想 ~ 学校vs映像研!どうなる、独自の価値観を持つ2者の対立!

© 2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

即売会・コメットAを目指すことになった映像研。相変わらずみどりは脱線しては細かいところばかりに気を取られてさやかに怒られっぱなしですが、あの生徒会がまたしても彼女らの前に……?
今回はタイトルも意識しながら見ると面白い回です!

※アイキャッチ画像ならびに本文中の画像は、 © 2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会様公式HPより引用しています。

コメットA参加に生徒会と学校が介入!

部活で金銭授受はNG!それに対しさやかは……

スケッチブックを前に腕を組むみどり。どうやらツバメの知り合いの音楽家の音楽を聞いて影響を受けたようです。

ソファにうつ伏せでタブレットを操るツバメ。相変わらず部室では行儀が悪い。しかしさやかは、そのツバメが日焼けしていることに気づき、注意します。映像研の売りは高クオリティのアニメ、ではなく人気読者モデルの水崎ツバメが参加していること。だからモデル活動も定期的に行なえ、そのためにも日焼けはするなとのこと。

またさやかは、芝浜商工会と協同し、声優オーディションも行おうとしています。その審査委員長は、ツバメを指名。渋る彼女に、主演しろとは言わないのでこれぐらいはやれとさやかは言い、ツバメも渋々従います。

声優をしたくないなら審査委員長をやれ……実際の交渉でも大いに使える、大きく無茶な要求後に小さな、かつ本命の要求を飲ませるテクニックです。
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なおここでさやかが使ったのが、ドア・イン・ザ・フェイスという交渉テクニック。大きく、無茶に聞こえる要求をして断れられた後、小さな、かつ本命の要求をして飲ませるというものです。人間は他者の依頼を何度も断りづらいという心理を生かしたテクニック。第2話ではこの逆の、小さな要求を連続して飲ませていつの間にか大きな要求もイエスと言わせる、フット・イン・ザ・ドアのテクニックを使っています。さやか、交渉事はやはりプロです。

そんな話をワイワイとしていた映像研の部室に、生徒会が乱入!生徒会、そして学校は映像研がコメットAに参加し、収益活動をすることを問題視しているようで……?

さやか、学校側にクールに反論。しかし学校側は……

シーン変わって、会議室。映像研は生徒会立ち会いのもと、教師たちから収益活動をしないよう注意されていました。しかし、さやかは「一字一句反論できる箇所が多すぎて会話する気が起きない」と、レベルの低い話し合いに呆れている様子?

学習指導要領に則って金銭的な活動はやめろ、と言う教師。しかし、なぜ金銭が絡む活動はNGなのか説明がない、とさやかは反論します。教師は言い返せません。

普通ならビビリそうな学校側との交渉でもこの態度。レベルの低さに呆れたか、それともこれも交渉術の1つか?
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そこで書記のさかきがストレートに言います。建前はともかく、そうした活動は校外の人から問題視されやすい、だからやめろ、と。
もっとも彼女は直前に、生徒会長に向かって「あんた教師の素質あるわ」と皮肉を言っています。彼女自身も学校の矛盾に違和感を感じつつも、映像研を野放しにはできない……と感じているのでしょう。

平行線をたどる話し合い。結局、責任者と思われる女性教師から「イベントに参加するのはいいが金銭の授受は禁止」と一方的に言われて話し合いが終わります。口は達者でもしょせんは生徒のさやか、立場が悪い……

ちょっとずつ進んでいく新作アニメ制作。ここでふと気づいたのですが、時間が経つごとに、映像研の設備がグレードアップしています。ツバメは2画面のペンタブを利用していますし、みどりはビデオチャットで外部関係者と打ち合わせをしている様子。

これも、さやかの言う「価値を生む活動」の成果でしょう。いい作品づくりには設備(=お金)が欠かせない。そのために前作の収益を設備投資に使って活動を大きくしていく……これはかなり現実的な指摘をしているように感じます。

教師は顔をしかめるものの、ツバメの知名度を使った宣伝活動は効果があるようで、だんだんと話題が広まっています。

いい加減ストーリーの大枠を作らないと……

商工会の協力も得ているから、実際の芝浜のシーンを入れたい……というさやかに、みどりはすでに考えている、と回答。「監督作も3本目ともなれば、皆の求めるものは分かってくる」とドヤ顔するみどり。

しかし実際には、作品の一番根幹である、敵のUFOがなぜ襲ってくるのか、それをなぜ芝浜の人々が防衛するのか、そこからして決まっていません。偉そうなことは仕事をしてから言え、というさやか。

どんどん新作の世界観を構築していくみどり。しかし肝心なストーリーの根幹が実は決まっていない……
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みどりはどうしても、木を見て森を見ず的な制作手法を取りがち。しかしそれもそもそも決めないことには、外部関係者へ作品や制作物の説明ができない……さやかは何度も言いますが、みどりはなかなか答えを出せません。

そこに謎の轟音が!みどりとさやかは音がする音響部へ走ります。そこには昼寝していた百目鬼が。轟音は彼女のいびきでした。起きた彼女はまだ金曜日だ、土曜日じゃない、とホッとします。そこに食いつくツバメとみどり。

野外活動を通じて展開される、映像研の独自世界

目的はシナハン?遊び?百目鬼についていくみどり

翌土曜日、百目鬼はサウンドを採取に校外へ繰り出す予定でした。そこへついていく映像研3人娘。

みどりはさやかから、これがストーリー作りに関係があるのか、自分の仕事をしろと言われますが、みどりはこれはネタ探し、シナハン(シナリオハンティング)だと言い訳して百目鬼に着いていくことに。

百目鬼の郊外活動に無理やりついていくみどりたち。シナリオを考えるため?それとも単に遊びたいだけ?(笑)
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芝浜の郊外を自転車で疾走する3人。そこから、学校からも見える大時計にたどり着きます。海を挟んでいつも見ている大時計。間近で見ると大迫力!百目鬼の目的の1つは、これの鳴らす時報の音を採取することでした。

大掛かりな機械じかけの時計にみどりは興奮!新たなストーリーを生み出します!が、さやかから「次回作の前に今回作のことを考えろ!」とまたしても注意を受けることに。辛い制作から逃れるための、楽しい次回作構想……これ、同人サークル時代私もよくやってました……(笑)

その時計台から旧陸軍の秘密兵器跡?と思われる目印を見つけたみどり。やっと、ちょっと今回の作品に関係のある構想を思いつきます!

が、そのとき百目鬼に動きが……?!真剣な表情で準備しだす彼女。いよいよ時報の時間になったのです。マイクのセットが完了し、じっと時報を待ち構える一同。そこで鳴り響く重厚感ある鐘の音……撮り終わったあとには一同脱力(笑)百目鬼、良音を収穫できて満足げ!みどりはまた無関係な新作を考えついてさやかに怒られますが(笑)

さかきも認めた、映像研の世界観

サウンドハンティングも一段落ついたのか、夕暮れの川辺で音取りしつつ遊ぶ3人娘+百目鬼。
そこに生徒会のさかきが通りかかります。みどりは生徒会長と誤認していましたが、彼女の役職は書記です。確かに、存在感はある意味生徒会長以上(笑)。

美しい夕日が差す川辺。さやかは生徒会のさかきと偶然出会い、いい雰囲気で語り合います。
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遊んでいるみどりたちを眺めながら、さかきがさやかに先日の話し合いについて聞いてきます。コメットAではあくまで収益を求めに行くと言い切るさやか。さかきは一応学校側の立場としてさやかを論破しようとしますが、さやかも個別に反論して譲りません。たださかきは学校にいるときとは違って、さやかを威圧したりねじ伏せようとする雰囲気ではありません

そんな会話を聞いているのかいないのか、みどりは川に小さな水車を作って、そこからイマジネーションを膨らませています。さかきはクールにその話を聞いていますが、その世界観を熱心に語られて1つのことを悟ります

「こいつらも、独自の世界だったわ」と。

学校vs映像研!独自の世界を貫くのは果たしてどっち?

学校という非日常、独自の世界

第10話冒頭では、コメットAで金銭のやり取りをするのは学校的にはNG、という教師から映像研へ注意が言い渡されました。教育上金銭が絡むのはよろしくないし、それが関係者に知られれば面倒なことになる、というのが学校側の言い分です。

学校
日本では小学校、中学校に通わせるのは親の義務とされていますし、現代では高校もほぼ全員が行き、大学進学率も50%を越えています。当たり前過ぎる存在のように思える学校ですが、その中では独自の論理が組織を構築しています。卒業してから思うと「なんであんなに色々と世間離れしてるんだろ?」とも思えるのが、学校という世界です。

金銭が関わることに過剰に反応することも、学校という世界の変なところの1つ。さやかの言うように、金銭は社会に出たら絶対に関わってくる大切なことなのに、学校では金銭について語ることは嫌悪されます。部活に金銭授受が絡むなどもってのほか。このことだけ見ても、学校が社会とは違う「独自の世界」だと思う人は多いでしょう。

なぜ学校は世間離れしている世界を構築しているのか?これはまぁいろんな見方があるかと思います。ネット的には日教組による社会主義的な考えが元凶、とか書いておけば受けがよさそうな気がします……が、現在日教組に加入する教員は2割ちょっとですから、そこまで影響力があるようにも思えません。

それよりは、「学校とはそういうもの」と関係者がみんな思って惰性で続いている、という方が現実なのかもしれません。あれほどの大組織を変えていくのはかなり大変なことですし、そういう独自世界のままのほうが、多数の生徒を束ねる教員も親もなにかと都合がいいことが多いのも事実です。

映像研もまた独自世界。成果を出せば話は早い、かも?

第10話のタイトルは「独自世界の対立」です。学校という独自の理論を持つ世界と、映像研というクリエイティブの塊のような世界。この2つの対立が、今回のタイトルになっているんですね。

映像研を「独自の世界」と言ったさかき。思えば彼女は、予算審議委員会のときから映像研の作品や活動に対する熱意には一目置いているように見えましたし、生徒会役員として、さやかとのタフな交渉を楽しんでいるようにも見えました。また、学校や教師を盲信しているように見える生徒会長を、皮肉るような発言もしています。

両者のことを知っている(知った)彼女から見ると、学校も映像研も「どっちもどっち、両方とも変な世界」と感じているのかもしれません。ラストのセリフ、「こいつらも」のところで「も」と言っているのが印象的ですね。

画像は第4話のものを引用。右から2番目がさかきです。映像研を強い口調で諌めつつ、実績や熱意は認めているような雰囲気。彼女の目には学校と映像研、それぞれの世界はどのように映っているのでしょうか。
© 2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

映像研メンバーが自分たちとは違う、独自の世界観を持って活動している、という点は生徒会の書記・さかきでなくとも、ちょっと彼女らに関わればすぐに分かること。百目鬼のように、その世界観に魅力を感じ協力する者も増えてきており、映像研はその勢力を少しずつ拡大しています。さかきも今後、肝心なところで映像研の味方をしてくれる、かも?

「出る杭は打たれる」のが学校という世界の理屈ですが、一方で出すぎて称賛を浴びた杭(=生徒)は褒めちぎるもまた学校。コメットAで映像研が大きな成果を上げれば、この対立は案外簡単に収束する、のかも?

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