「イエスタデイをうたって」 1話 感想 ~ 複雑な思いを抱える陸生、晴、榀子……時代設定にも注目だ

©冬目景/集英社・イエスタデイをうたって製作委員会

2020年春クールの3作目はこの作品です。

私は恋愛もの作品が大好きです。ドタバタなラブコメもいいけど、シリアスにキャラクターの心情に迫る作品も毎クール1作品は取り上げたい……と思ったところに、実にいい雰囲気の作品がありました。

また、単なる恋愛だけではなく、生きるとはなにか?人生とはなにか?みたいなテーマにも迫ってくれそうな雰囲気も見せてくれており、それも実に私の好みです。

では第1話を見ていきましょう!

※アイキャッチ画像ならびに本文中の画像は、©冬目景/集英社・イエスタデイをうたって製作委員会様公式HPより引用しています。

フリーターの陸生、同級生の榀子、訳あり少女晴……3人の出会い

第1話のストーリーまとめ!

魚住陸生は、やりたいこともなく大学卒業からそのままフリーターになり、コンビニでアルバイトをしている日々。

ある朝、そんな陸生の前に、カラスを連れた謎めいた少女、野中晴が現れます。妙に陸生になついてくる晴。一方、陸生は晴を可愛いとは思うものの、不思議な女の子としか思っていません。

彼女いわく、2人は以前にも会ったことがあるようですが、陸生は思い出せません。

カラスを家族という謎の美少女、晴。妙に陸生になついています。彼女いわく以前会ったことがあるようですが……陸生は覚えていません。
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その陸生の元に、同窓会のお知らせが。フリーターが行っても白けるだけだろ……と言っていた陸生ですが、ある名前を聞いてハッとします。森ノ目榀子。彼女は大学の同級生で、なにかと陸生に世話を焼いてくれた、そんな女子。彼女は地元で就職していたはずですが、同窓会の知らせを持ってきた友人・福田がこっちに来ていると教えてくれます。彼女のことを特別視していた陸生は、心が揺れます。

バイト先に来てくれた榀子。陸生は彼女を送ろうと夜道を歩きます。懐かしい話で盛り上がる榀子。そんな榀子を見つめ、陸生はさらに複雑な気持ちに。

そこに!晴が現れます。すると意外な事実が。晴は榀子の教え子だったのです。しかも、晴は盛り場でバイトをしていたことを理由に停学になり、その後退学したとのこと。榀子をやんわりと拒絶する晴。榀子は晴になにかを謝りたいと思っているようですが……陸生的には、それよりも榀子から晴と仲良くしてあげて、と言われたことの方がショックでした。

なにかと陸生に世話を焼いてくれた同級生の榀子。これはまぁ好きになりますわ……しかし彼女も、晴を巡ってなにかを抱えている模様。それがなんなのか、注目していきたいと思います。
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榀子と別れた後、ため息をつく陸生。そこにまた晴が現れます。陸生の片思いをちゃかす晴。恥ずかしがりながら、陸生は話題をそらします。晴が以前会ったことあるというけど、思い出せない、と。

晴と陸生は、5年前に会っていました。受験会場に急ぐ陸生が落とした受験票を拾ってくれたのが晴だったのです。

受験票を拾ってくれたことは覚えていたものの、それが晴だとは覚えていなかった陸生。晴もその当時はメガネをかけ三編みにしていたので、無理はありません。

晴はそれ以来、陸生のことを通学中に見つけては意識をしていたようで……もっとも、晴は「後半は大嘘!」と言って否定しました。わけが分からん、とつぶやく陸生。そしてそんな2人のやり取りを静かに眺める榀子。

陸生がいない間、榀子はまたバイト先に来てくれた模様。それをバイト仲間の木ノ下に冷やかされますが、陸生は後ろ向き発言を連発。最初は冷やかしだったはずの木ノ下も、それを聞いてちょっとヒートアップ。自分が傷つかないように逃げてるだけじゃないのか、と言います。

自分を社会のはみ出しものだと思っている陸生。一生懸命なにかをやっている人になにか言う資格はないと思っている陸生。ですがそんなことを考えている内に、そんな自分の殻を破ろうと決意!榀子に告白しようと自転車で駆け出します。

夜遅くに榀子の家の前にたどり着く陸生。そして告白しました。
しかし榀子の答えは、友達でいようでした。陸生はフラれてしまいました……。

フラれてしまって、がむしゃらに自転車を漕いだ陸生。夜空に向かって、鬱憤を晴らすかのごとく叫びます。
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けじめがつけられた、と言いつつもやはり悔しい陸生、夜の街を自転車で疾走し、コケます。
ゴミに突っ込み、天を見上げ、「これでいいんだ」と諦めつつも、「人生やめてー!」と大声で叫んでウサを晴らすのでした。

翌日、木ノ下に頼まれた写真を取るため、カメラを片手に公園に向かう陸生。
そこには晴がいました。額の傷の話から、自分がフラれたことを話す陸生。晴はそんな真っ正直に突っ込んだ陸生のことが眩しかったのか、ちょっと意味深に、でも親しげにいろいろなことを話します

2人の距離が縮まったところで、第1話は終了しました。

意味深な発言連発!過去になにがあったのか注目だ

第1話の名ゼリフ・迷ゼリフ!

あのときのこと、今でも後悔してるの。ごめんなさい(榀子)

陸生を軸に、偶然再会した晴と榀子。しかしその関係はかなり複雑な様子。榀子の説明いわく盛り場でバイトをしていたことがきっかけのようですが、それだけだと榀子の言う「あのときのこと」「後悔」の説明がつきません

晴が榀子の元教え子であることはストーリーパートでも触れた通りです。しかし時間軸を考えると、榀子はこの春に卒業した新米教師。晴と関わった時間は短いはずですが、その短い間になにがあった?

また、榀子は学期の途中に学校を移っています。それは榀子の言う「あのときのこと」「後悔」に関係しているのか?

今後の晴と榀子の関係に注目せざるを得ない、キーになりそうなセリフではないかと思われます。

俺的に、けじめつけておきたいなって思っただけだから(陸生)

フリーターでいることも、榀子に思いを伝えないのも、自分を守っているだけと感じ、玉砕を覚悟で榀子に告白した陸生。結果はNGでした。

男が告白するタイミングって、こういう場合、多いんじゃないかなと思います。まぁまぁ仲良くやれてるけど、それだけでいいのか?と思い、勢い付けて……みたいな経験、ある方もいるかと思います。ハイ、私もその1人です……。

それだけに陸生の気持ちは分かる。分かる一方で、今にして思えば、これって手段と目的が逆転してるんですよね。だって、告白って本来は、好きな相手と付き合うためにするものなわけで。でも、この気持ちになっちゃうと、告白自体が目的になってしまって、相手のことを考えてるとは言えない状態に陥りがち。

やりたいことがないから、とバイト暮らしを選んだ陸生。自分を傷つけないよう生きてきた彼は、木ノ下の発言から一念発起、榀子に告白しますが……こういう自分本位の告白は、得てして上手くいかないもの。
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もちろん、結果としてうまくいくこともあるかと思いますが……大抵の場合、相手の気持ちより自分の気持ちが優先してしまうとうまくいかないのでは、と思います。恋愛はタイミングが大切。そして、相手の気持ちが大切。でもそういうのって、後にならないと分からないものじゃないかな……とか、他人を見てると思うけど、自分だとなかなか……。

また、この後の公園のシーンで陸生は、フラれた後の気持ちを「別にどうにもならん。ずっと同じところにいるだけ」とも言います。フラれる恋愛はフラれる直前が気持ちのMAX。その後は、そんな盛り上がった気持ちが嘘のようにただの日常に戻る……体験したことある人なら分かる無情さが伝わるセリフで、これもすごくグッと来ました。

モテる男子ならこんな不器用で、勝率の低い告白はしない。そんな告白をする陸生に感情移入できるかどうか?この作品への思い入れが大きく変わってくるポイントかも知れません。私はこの一連の流れで、グッと陸生に感情移入してしまいました!

嘘つきって、なにも無くさないけど、なにも手に入らないんだよね(晴)

陸生がフラれたと知った後、晴は嘘つきについて語ります。彼女の話をまとめれば、嘘つきは上辺のものは手に入れられるけどそれは手に入った内に入らない、ということになるかと思います。全体的な流れから、好きな人へ真正面から当たっていった陸生を励ますセリフのように聞こえます。

第1話から深い発言が出てきた晴。いったい、なにがあって彼女はこのセリフにたどり着いたのか?興味を持たずにはいられません。
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ただ、現時点で晴についてはわからないことだらけです。晴はなにがあって学校を中退して、なぜ一人暮らしなのか。陸生や榀子にどういう思いを抱いているのか。一連の「嘘つき」発言も、自分のことを言っているようにも見えます

彼女はなにに嘘をついてきたのか?なにを得て、なにを得られなかったのか?
ミステリアスな晴の印象が、より深まるセリフでした。

タバコから見る時代設定。約20年前を舞台にした理由は?

かつては日常だった、男子とタバコ

まず、時代考証から。
陸生のカメラは現代のデジタルカメラではなく、フィルムカメラのようです。これだけで、舞台は約20年前ぐらいなのでは?と推察できます。

また、タバコにも注目しました。陸生の持っていたタバコは、名称こそ別物ですが、かつてのマイルドセブンに酷似しています。思わず「懐かしい!」と思ってしまった、シンプルな青のラインのマイルドセブン。あのデザインも、確か20年ほど前のものでした。

そもそも、主人公がタバコを吸うこと自体、古い舞台の作品ですと強調しているともいえます。20年ぐらい前は、男性の喫煙率は50%近く、陸生の年代である20代ですと60%を超えていました。今では信じられませんが、タバコを吸う方が多数派で、駅のホームなど公共の場所にも喫煙所が多数置かれていた時代だったのです。

陸生のような普通の主人公がタバコを吸う、それだけで「少し古い時代が舞台ですよ」と強調しているともいえるほど、タバコは日常的でなくなりました。敢えてこの時代を舞台にした理由にも注目したいところ。
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しかし2000年代中盤から法律によって規制が厳しくなり、タバコの有害さが強調され、現在の男性の喫煙率は30%以下。値段も高くなったこともあって、20代の男性の喫煙率は25%程度です。読者の皆様、特に若い方であればあるほど、タバコにはいいイメージがない、という方が多いのではないでしょうか。

映像表現においても、映画で喫煙シーンが出てくるとそれだけでクレームが入るぐらいタバコを見る目は厳しくなりました。アニメですとそこまで厳しく規制が引かれているようには見えませんが……以前はハードボイルドなキャラクターを強調するため、小道具としてタバコが使われることも少なくありませんでしたが、最近ですとそういう演出はあまり見なくなりました。

そういえば、カーアクションで有名な「イニシャルD」でも、原作・初アニメ化の際は登場人物たちがよくタバコを吸っていましたが、リメイク版ではそういうシーンはなくなったのも印象に残っています。

この舞台で、3人がどんなストーリーを織りなすか?注目!

このように、今となっては日常的でなくなりつつあるタバコ。それを敢えて取り入れた時点で、本作の時代設定、世界観が少し分かってくるかと思います。敢えて20年前を舞台にした理由は何なのか?そこも気になるところです。

そんなちょっと昔の世界で、フリーターの陸生と、学校を中退した謎めいた少女の晴と、2人に深い関わりがある榀子という3人の恋模様を描いた本作。しかし単なるラブストーリーでは終わらないでしょう。第1話からして、登場人物たちが深いなにかを抱えながらいまを生きていることも分かりました。

3人はどういう過去を送ってきて、どんな事件があったのか?

思わぬ場所で顔を合わせた3人は、どんな関係に変化していくのか?

結果として、3人はどういう道を歩んでいこうとするのか?

そんなところに注目しながら見ていきたいと思います!

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