「球詠」 3話 感想 ~ 全国を目指す意味とは?勝利至上主義に挑戦する新越谷野球部

©マウンテンプクイチ・芳文社/新越谷高校女子野球部

前回、4人が加入・復帰した新越谷高校野球部。これで選手は7人になりました。
今回はさらに2人の選手が加入?しかもどでかい発言まで飛び出します。
それを巡って選手たちの考え方は様々なようですが……さて、どうなる?

※アイキャッチ画像ならびに本文中の画像は、©マウンテンプクイチ・芳文社/新越谷高校女子野球部様公式HPならびにTVアニメ『球詠』(たまよみ)公式様Twitterアカウントより引用しています。

希から出た「全国」発言に沸き立つ新越谷!でも珠姫は……?

第3話のストーリーまとめ!

前回、4人が加入して選手が7人となった新越谷高校女子野球部。
そこへさらに、2人の見学者が来ます。

1人は大村白菊。野球は未経験。しかし剣道では中学で全国大会優勝という輝かしい実績を持っています。彼女の長所はパワー!剣道で鍛え上げられた肉体から放たれるスイングは、当たればどてかいホームラン!ただ当たれば……の話でなかなかそうはいかないようで。

白菊はずっと、野球をやりたかったとのこと。しかし家が剣道道場をやっており、親が希望を叶えてくれることはなかったようです。親が出した条件は、剣道での全国優勝。無理難題だったはずですが、白菊はこれをクリアする根性の持ち主だったのでしょう。これほどの基礎体力を持った選手はチームの力になるに違いありません!

どんなカテゴリでも日本一を取るというのは至難の業。それを成し遂げた白菊は、野球でもやってくれるはず!持ち前のパワーが炸裂するところを早く見たい!
TVアニメ『球詠』(たまよみ)公式Twitterアカウントより引用

もう1人は中村希。ただ彼女は、当初は入部に消極的でした。福岡から引っ越してきたという希は、中核時代は強豪校にいました。そこで友達と交わした約束は、全国で再会すること。とはいえ、今の新越谷はできたてのチーム。この部では約束は叶いそうにない……と思い、入部はしないと考えていたのです。

しかしその打撃は超一流!打撃の基本である、センターに強い打球を打つという技術がしっかり備わっていた彼女。左投げ左打ちというのも、右打者ばかりの新越谷にとってはよい補強になります。

そんな希でしたが、詠深の変化球を見て考えを変えます。すさまじい落差を目の当たりにして、彼女の新越谷野球部の評価は急上昇!さらに芳乃が押しに押した結果、入部することに。しかしその条件は、なんと一緒に全国を目指すというものでした。

希の一言で、本当に全国を!と急激に盛り上がる新越谷の一同。しかし、その中でちょっと暗い顔をしている部員がいました。珠姫です。なにかを考え込んでおり、どうも練習中もそっけない態度。

その珠姫は、練習後に詠深を誘い彼女に問います。本当に全国に行けると思っているのか、と。強豪チームにいた珠姫は、勝つということの難しさを知っている。また、そのために個人の思いよりチームが優先されることも。

そうした経緯があり、野球をやめた彼女。しかし詠深たちとの練習を通じ、やはり野球が好きだと再認識しました。とはいえ勝つとなると話は別。楽しく野球がやれればそれでいい、と思っていた珠姫は、急に全国と言い出したメンバーに少し戸惑いを感じていたようです。

それに対し詠深は答えました。真剣にやって頑張って、それで勝てれば最高に楽しい、と。彼女の笑顔を見て、珠姫は悩みが払拭されたのでしょう。もっと練習しないとね、と笑顔で言うのでした。

とうとうユニフォーム完成!胸のロゴが漢字のユニフォームは伝統校に多いです。近年はアルファベットのロゴが多いですが、漢字もカッコいいと思います!
©マウンテンプクイチ・芳文社/新越谷高校女子野球部

そんな2人の会話を聞いていた芳乃、練習メニューをかなりハードにすることに!
ユニフォームも完成した新越谷野球部、練習試合をすることになりました。とはいえ、相手は強豪校?!

どんどんとチームができていく勢いのまま、第3話は終了しました。

全国をめぐる、キャラクターたちの思いは

第3話の名ゼリフ・迷ゼリフ!

一緒に目指して欲しいっちゃけど、全国を(希)

福岡の強豪校にいたという希。当初はレベルが高くなさそうな新越谷の野球部に入る気はありませんでした。どうやら新越谷がかつては強豪だった、という古い情報を元に入学を決めてしまったようです。

そんな彼女が入部を決めたのは、芳乃が押しまくったから……というのはあるかと思いますが、詠深の変化球を見たのはかなり大きかったでしょう。野球はピッチャーによってかなり勝ち負けが決まります。いくら打ってもピッチャーがショボくてはすぐに取り返されますからね。いかん、「一緒や!打っても!」を思い出してしまった……あれももう20年前の話か(※)。

希がその気になってきた大きな理由は、詠深の変化球を見たから。野球どころの福岡で揉まれてきた希をその気にさせたのだから、詠深の変化球は本物ということでしょう!
TVアニメ『球詠』(たまよみ)公式Twitterアカウントより引用

ゴホン、脱線しました。詠深の球を見て目の色が変わった希。また、珠姫が中学で全国を経験していること、白菊がジャンルは違えど日本一を取っていることなどから、考えを改めます。そして入部の条件として出てきたのがこのセリフでした。

第2話までは、野球をやれるかやれないかという状況であり、そもそも部員が9人いなかった新越谷。しかし彼女のこの発言で急激に全国を目指すという機運が高まりました。高い目標を持つことは、基本的にはいいことです。野球部の面々の視線を変え、モチベーションを上げる大きな分岐点となったセリフと言えましょう。

※先日コロナウイルスに罹患し大きなニュースになった、片岡篤史さん(元阪神、日ハム・現YouTuber)が現役時代に放った一言。詳しくはこちらを参照。インターネットが根付き始めた頃に飛び出たこの発言、2chの創成期にネットスラング(ただし野球関係限定)の1つとしてよくネタにされました。

私を連れて行ってよ、全国!(詠深)

希の全国目指す発言から急激に上を目指す機運が高まった新越谷。しかしそこで冷静だったのは珠姫でした。練習後に詠深を呼び止め、水辺で心のもやもやを語った珠姫に対し、詠深はあくまで前向きに答えました。そして出てきたのがこのセリフです。

これ、「私が連れて行く」でもなく「一緒に行こう」でもなく、「連れて行ってよ」っていう受け身な形になっているんですよね。詠深はピッチャーですから、「私が連れて行く」という発言をしたとしてもおかしくはありません。まぁ詠深の性格的にそれはないなと思いますが、だとしたら普通は「一緒に行こう」だと思います。

連れて行ってよ、と受け身とも取れる発言をした詠深。ここは考えると深いですね。私の解釈は↓に書きましたが、みなさまはどう思いましたか?
©マウンテンプクイチ・芳文社/新越谷高校女子野球部

正直、初回に見たときはなんで受け身なんだろう、とかなり引っかかっていました。ただ見返して思ったのは、詠深が野球をやれている理由です。詠深は当初、野球は中学でやめようと思っていました。しかし珠姫と再会して、自分の変化球を受けてくれたことから、もう一度野球をやろうと決意します。

自分は珠姫に野球をやらせてもらっている、自分が野球をやれているのは珠姫のおかげだ……一見受け身のこのセリフは、そうした珠姫への感謝の気持ちが強く現れているのかなぁと私は解釈しました。

楽しい、は勝利至上主義を打ち崩せるか?

打撃の作画、アニメーションが見事!

本作、野球シーンの作画とアニメーションがすごく凝ってますね!それを実感したのが、希と白菊のバッティングシーンでした。

希は、右足をわずかに外側に構えるスタンスを取っています。そしてその構えからシュアなバッティングを披露した彼女。バットもきれいにレベルスイングしています。

希と白菊の構えを見ると、野球経験者かどうかが一目瞭然。そうした細かいところまで作画している本作、すごいです。
©マウンテンプクイチ・芳文社/新越谷高校女子野球部

一方の白菊の構えは、希と比べれば素人なのは一目瞭然。そしてバットの出方は、かなりのダウンスイング……大根斬りです。これは彼女が剣道経験者という設定から来ているのでは、と思っています。とはいえ大根斬りでも芯に当たれば飛びます。白菊のパワーがあればなおさらです。

このように、キャラクターの性格に合わせてスイングを細かく描いている本作。練習シーンですらこのこだわりですから、試合とかどうなっちゃうのか?今後が楽しみになってきます!

野球界を覆う、勝利至上主義

さて、第3話では希の全国発言から部員たちが全国大会を意識し始めますが、その中で暗い顔を見せたのが珠姫でした。

思い返すと、第1話で芳乃は珠姫のことをキャッチャーとしての能力は優れているけどチーム事情から出場できなかった、と言っていました。そして珠姫は野球をやめるつもりで、新越谷に入ってきた。

これは今後の話でも出てくると思うので今日はちょっとだけ触れることにしますが、おそらく珠姫は中学時代、打撃力が不足しており試合に出られなかったのではないかと思います。

キャッチャーに大切なのは守備力……と素人は思うところですが、プロ野球を見る限り、重宝されるキャッチャーは結局「打てるキャッチャー」です。よほどキャッチングがひどくない限り、キャッチャーと言えども打撃力が優れる方が優先される……それが現実です。

打てない珠姫を阻んだもの……それは勝利至上主義ではないかと思います。日本の野球は、甲子園を筆頭にトーナメント制になっていることが多い。負ければ即終わりのトーナメントでは、とにかく勝ちにつながる選手を優先的に起用する傾向にあります。結果、控え選手は試合に出られず悔しい思いをする。それが元で野球をやめてしまう選手も少なくありません。

こうした勝利至上主義は、前回見た行き過ぎた指導と並ぶ日本の野球(ひいては日本の部活スポーツ)全体に見られる悪癖であり、問題視する声が上がっているものの改善される雰囲気は見られません。

勝つことは野球を楽しくなくするものだと珠姫が認識しているのは、こうした野球界の考えの犠牲になってきたからだと言えます。

勝つための野球は楽しくない、と思う珠姫と、勝つことは楽しいことだ、と思う詠深。どちらが正解ということはありませんが、新越谷野球部には単純な勝利至上主義を覆すなにかを見つけて欲しいですね。
TVアニメ『球詠』(たまよみ)公式Twitterアカウントより引用

その珠姫に対し、詠深は好きな人たちと一生懸命楽しくやって、その結果として勝ちをつかめれば最高だと言います。中学時代はチームメイトに恵まれず、そもそも勝つことができなかった詠深。彼女は勝ちに飢えています。自分の右腕で勝利を掴みたい、そのために努力することは楽しいことでしかない。詠深はそう考えています。

野球を楽しむ、という点において、なにが正解かは分かりません。というより人それぞれですから、正解なんてない。詠深が正しいとか珠姫が正しい、ということはありません。

ただ、詠深の言う楽しい野球が、誰かを犠牲にした上で勝つような従来の勝利至上主義を覆していくものだとしたら、いろいろな意味で痛快です。この作品は今までの野球のイメージを覆したい、みたいなところまで考えながら作っているのでは……第3話を見て思いました。

新越谷野球部が、新しい野球の価値観を作り上げていくところをぜひ見てみたい!

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