「映像研には手を出すな!」 3話 感想 ~ 制約の中で“アニメーション”を作るには?3人娘、奮闘!

© 2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

だんだん部としての体裁が整いつつある映像研。
あとは実績作り、つまり作品作りあるのみ!
しかし現実的には時間の制約は大きいが……果たしてどうする?

※アイキャッチ画像ならびに本文中の画像は、 © 2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会様公式HPより引用しています。

なかなか進まない部室修理……屋根の上で大ピンチ!!

ロゴに凝る前にやることあるだろ!と叱られるクリエイター2人組

例のオンボロ部室。
みどりとツバメはロゴマークを部室の上につけようとしています。
作品の最初にテクテクと歩いたりしちゃうんです、と盛り上がる2人。
いいですね!今後の展開で本当に歩くシーンを期待したいところ!

映像研のロゴマーク。これが動くところを早く見たい!
© 2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

もっとも、さやかは作品もないのにマークに凝っても仕方ないのに……とまた叱りつけます。
「誰かさんが隠していたアニメ制作計画をバラすから」って、あの失敗生きてたんですね……。しかもさやか、詭弁をまくし立てたて誤魔化したから、冷静になったらバレる……と自分の交渉術にも限界があることを悟っている様子。
これは早く作品作りをしないとですが……

とにかく、穴だらけの部室を何とかしないといけません。
ブリーフィングを実施するも、みどりが「不真面目な態度は厳禁!」と言いつつ、結局チョウチョやらタヌキやらを目撃しては盛り上がる2人。割と自然が多いところにあるんですかね、この学校……しかしミヤマカラスアゲハとひと目見ただけでよく分かったな(笑)

脱線してばかりのクリエイター2人を叱りつけて、何とか前に進もうとするさやか。アニメ制作のため……いやお金のため??
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ちなみに例の転落映像、3万円で売れて部費になったわけですが、どうやらそれは工具に姿を変えてしまったようで。「犠牲になった3万円に黙祷!」ってものを変えばお金は消えますがな(笑)
ちなみに黙祷時、さやかは3万円が大金に化けるようお祈り。一方ツバメはお金持ちだから小3のお小遣いと同じだそうで。分かっていましたが、金銭感覚の違いがモロに出たところです

みどりは外壁の修理に。でも修理もみどりにかかればSF妄想!宇宙船の修理という設定に早変わり。真空の宇宙だとドリルの音はない、塗料の定着は静電粉体塗装……といろいろ考えていた割に最後は「まあいいや、しょせんは私の妄想なんだ」と案外ザル(笑)
真面目に塗装しているかと思いきや結局落書きしていて、またもさやかに怒られます。

ボロバケツを宇宙服のメットに見立てたみどり。彼女にかかれば何でもファンタジーの世界ですね!
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時間がない中、とりあえず屋根だけでも修理してくださいと現実的な指示を下すさやか。クリエイター2人は屋根に登って修理開始。登ったら体重で落ちそうですが……そこは大丈夫?(笑)

またしても宇宙船の設定で話が進む2人。ただの錆びた穴もみどりの設定では宇宙デブリがかすった穴。
しかしそこでアクシデント発生!宇宙デブリという名のヒョウが降ってきます!その影響か?ハシゴが倒れてしまい下には下れない。しかもそんなときにツバメはトイレに行きたいと深刻な悩みを告白!しかもさやかは誤って扉の前に机を設置してしまい、部室から出られない!これは大ピンチ!

緊急事態!飛行士はピンチ、宇宙船は異常事態!間に合うのか?!
© 2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

ちなみにこのときにさやかが言った「事件か、事故か?」というのは110番したときに最初に聞かれるフレーズです。しかし扉の前に机を設置してしまうとは、さやからしくないミスですねぇ。

映像研が迎える大ピンチ!そんな中でさやかが出した答えは、緊急脱出艇の発動!ではなく、壁をぶち破るという荒業!ても出てみたら雨どいをつたってもう降りていた……あいも変わらずいろいろお騒がせな彼女たちでした。

作りたい作品は……戦車と女子高生?

なかなかまとまらない3人娘……

何にせよ、夕方にはとりあえず部室の穴修理は終わったみたい。
あとは実績作り……と意気込む3人の前に、顧問の藤本先生が現れます。相変わらずひげが重いとぼやく先生は、部活・同好会の予算審議委員会のチラシを持ってきます。ここでアニメ作品を出して部への昇格、予算ゲットを狙おう!と意気込む面々。

さて、どんな作品を作るか……やたらとハイテクな食堂で相談する3人。本作、アナログな部分とハイテクな部分が共存していてそのギャップが面白いところです。

作品作りとなると、例によって3人の意見がぶつかります
さやかは手間が少なく派手で目立てばいいと主張。一方ツバメは時間を掛けてでもいいものを作りたいと抵抗します。それに対しさやかは「5分として3600枚、2人は55日間24時間労働」と現実を突きつけます。現実的な数値を出してくるあたりはさすが、という感じですね。

素のツバメはこんなですが、ホントは人気モデル。電車の中でも握手を求められて爽やかに(?)返しています。
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作品作りのヒントを得るために、書き溜めたネタ帳を見にみどりの家に向かう3人。みどりは、第1話のアバン部分で見た団地にずっと住んでいるんですね。

まとまらない、でも動き出せばすごい!

みどりの設定画集を見ながら議論する3人。凝りすぎた設定は時間がかかるのでNG……ということで、荒野の中にある石造りの廃墟に決定。

そこでどんな作品を作るか?みどりはお得意の、設定がバリバリに凝った個人防衛戦車を描きたいと主張。光と音の時差まで考慮する凝りようです。はたから見ると、ツバメならずともそれって派手なの?とは疑問に思うところですが……

一方のツバメは、斜面から滑り降りて転ぶ、みたいな人物の動きにこだわったアニメを作りたいと主張。そんなの地味だしもっと効率がいいものを、と反論するさやかですが、ツバメは
「アニメは、アニメーターの演技なんだ!」
「私が作りたいのはアニメじゃなくてアニメーションなんだぁ!」
とと力強く叫びます。

「作りたいのはアニメじゃなくてアニメーション!」名ゼリフ、いただきました!
© 2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

ここでやる気を削ぐのは得策でないと判断したさやかは、2人のアイディアを混ぜて作っていこう、とGOサインを出します。「戦車VS女子高生」。かなり強引な……とここでは思います。

思いましたが、ここから怒涛のごとく制作が進んでいきます
例の窓に貼り付けた紙に、クリエイター2人の熱がどんどんと書き込まれていきます。

剣はマチェットでいこう、酸素が薄いという設定でガスマスクをつければ顔の作画を省略できる、アップになったときには目まで見える演出にすればツバメの希望である人物絵もしっかり表現できる、爆発を一個描いてそれを連発すれば派手に見える……
現実的なアイディアが次々と湧いてきます。

「これは、うまく行ってしまうのではないだろうか?!」と一同のやる気が高まったところで、第3話は幕を閉じます。

超現実的なアニメ制作論が展開!

やっぱり動くとすごい説得力だ!!

いよいよアニメ制作に取り掛かった3人。
ここまで見てきた通り、みどりは設定重視、ツバメは人物重視、さやかはお金重視(笑)なので最初はなかなかまとまりません。出てきた答えも戦車VS女子高生って……どんな作品?
正直、最初は「なんじゃそりゃ?」と思いました

最初は「?」な設定も……動くとすごい説得力!
© 2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

と思いきや、最後は相当にサマになった作品が見えてきました

激しく攻撃する戦車、そこに躍動感あふれる女子高生が斬りかかる……物語はあるようなないような、なレベルですが、この短い動画だけでも「なんかすげぇ!」と思わせるには十分。これがアニメーションの力なのか!と唸ってしまいました。

ツバメの言うとおりです。「日常の何気ない立ち振舞でも動画にすれば見栄えする!」「アニメーションは動いてなんぼ」、そうした言葉にバリバリの説得力を持たせるショートアニメでした

こうした思いを実際の作品で混ぜてくるあたり、制作陣の力の入れようがこちらにも伝わってきます。

手抜きアニメ?いえいえ、これもアニメの歴史です。

一方、作中ではかなり現実的な省力化のテクニックも出てきました。

「時間のかかる顔を描かずにアクションを集中して描く」
「寄りのときだけ表情を見せる」
「爆発エフェクトを使いまわして楽に派手に見せる」
「戦車と少女を交互に映して時間稼ぎ」
……などなど。

これって手抜きでは??と素人は思ってしまうところです。

エフェクトの使い回しや止め絵の活用……今私達が楽しんでいるアニメのテクニックが満載な第3話でした。
© 2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

しかし、見方を変えればこれもアニメ制作の歴史、そして現実だったりします。この点に関して非常に興味深い論文を、関西学院大学の桑原圭裕准教授(現在)が執筆しています。

漫画のアニメーション化における一考察

論文自体は2008年に執筆されたもののようですが、内容は現在も通用する指摘になっています。

この論文の中で桑原准教授は、漫画界の大家でありテレビアニメ創成期で大活躍した手塚治虫先生が、週イチの放映に予算内で(手塚治虫先生は低予算と嘆いていますが)制作を間に合わせるために、様々なテクニックを生み出したと関係者の証言から論じています。
いわく、

  • 止まっている絵にセリフを当ててごまかす
  • キャラのパーツをアップにして枚数削減
  • 口だけ動かして省エネ化
  • カット割りや効果音を工夫して動いているように感じさせる
  • 動きよりも物語性を重視

などなど。

桑原准教授はこうした技法を用いた「動かない日本的なアニメ」について論文内で問題提起しており、そこについては読者の皆様もいろいろな考え方があるかと思います。実際、アニメファンの評価が高まる作品はやはり「動く」アニメですしね。

ただ、現実的にそうした歴史があり、現代でもなお低予算で短納期という壁が立ちはだかる中で、こうした技法が今もバリバリ使われているのは事実
そう考えると、みどりやツバメが作中見せたアイディアは、まさに日本のアニメ史そのものだったりするわけです。

きっと今日も、いやこの深夜も、動かせない制約の中にありながらも、何とか動きをつけていこうと努力するアニメーターがいて、動きを見せようとする演出家・撮影班が工夫を重ねていることでしょう。

我々アニメファンは、そうした努力の上で楽しんでいることを改めて感謝しなければなりませんね。

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